ヘンミ歯科医院コラム 歯のお話いろいろ
毎月1回、『歯のお話いろいろ』と題したコラムを掲載します。歯の健康や治療に関することを6回にわたってお届けいたしますのでお楽しみに!
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『幸せな人生のために』

『歯は生きている』

『美しい歯とは』

『虫歯は怖くない』

『歯は動きます』

『歯を支える仕組み』

第一回 『幸せな人生のために』
 
 毎朝、私たちは鏡に映った自分の顔を見ます。澄んだ目、健康な顔色を見て、安心して明るい一日が始まります。そのとき、きっと口元にも目線が及んでいると思います。そして美しい健康な歯が、幸せな人生を実感させてくれます。

 もちろん、歯は食事やおしゃべりに必要なものですが、正しくかみ合っている歯並びは、人の外貌(がいぼう)を整えるほか、正しい姿勢や力仕事、スポーツにも非常に役立つと考えられています。

 しかし、人が霊長類として進化してきた過程で、あごの形が小さくなり、歯とその周りの環境が正しく整っていないケースが増えてきました。歯並びや噛み合わせが正しくない場合も多く、口の中の異常や虫歯などを生じさせる一因となっています。

 虫歯はほとんどの場合、最初、「無痛無自覚」です。痛くないからといってそれを放置すると「慢性経過」をたどります。そして我慢しても決して良くなることはなく、「不可逆性」の性質を持っています。

 ですから、虫歯は早いうちに見つけて治療することが一番です。また、一本の虫歯が見つかったからといって、その歯を治療しただけでは”木を見て森を見ない”のと同じこと。つまり虫歯が一本見つかるなら、たいていほかにも小さな虫歯が隠れています。虫歯ができる口の中の環境、清掃状態、食生活などを見直す必要があるともいえるのです。

 歯の疾患と治療についてはまだまだ十分周知されていません。これから皆で関心を高め、正しい知識を共有することが、歯の健康増進につながっていくのではないでしょうか。

 
第二回 『歯は生きている』
 
 歯は生きています。

 歯は人の年齢と共に常に変化を重ねています。また、体の中で一番硬い構造体で、強そうに思えますが、実は体の中で一番早くから傷められ、失われていく可能性の高いものです。

 その外観からは想像もできませんが、歯とその周辺の構造や仕組みは非常に複雑で生涯を通じて成長と変化を繰り返しながら、健気(けなげ)に生きております。

 例えば、乳歯が永久歯と生え変わるときは自然に脱落しますが、抜けた歯を見ると歯冠だけで、歯根はありません。元々、乳歯にも長い歯根があったのですが、後継の永久歯の発育や萌出(ほうしゅつ)を妨げないように歯根を消失させてきた結果なのです。
 
そして、永久歯が萌出しても、歯根は未完成のままで歯髄(しずい)はまだ太く、すべての永久歯が完成するのは20歳代になります。

その後も歯髄は象牙質をつくりながら、さらに細くなり続けてその機能を果たし、高齢期になると自然に消失していくようです。

歯の成長と変化にかかわる生理的現象については、まだまだ興味の尽きない面白いことがたくさんあります。
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 歯の健康を維持するためにも、健康を回復させるためにも、年齢や全身の状態、さらには、一本の歯のことだけでなく、すべての歯や周辺の状態をも視野に入れた”科学的根拠に基づく質の高い医療”が求められるべきだと思います。

 そして、一人ひとりのお口の状況にふさわしい処置方針が立てられ、計画的な診療が進められることによって、美しく、よくかめる、清潔で健康なお口の環境が整えられることになります。

私たちは”歯と共に生きる人生”をもっと大切にしたいものです。

 
第三回 『美しい歯の色とは』
 
 昔から日本では「明眸皓歯(めいぼうこうし・澄んだ瞳、白い歯の意)」が美しい顔の要件とされ、歯の色には強い関心が持たれてきたようです。

健康な歯は、先端に透明感があって白く、根元に近づくにつれて黄みを帯びた白色になります。このような色合いは、歯を構成しているエナメル質、象牙質、歯髄(しずい)の微妙なバランスによって出来上がります。個人差があり、年齢とともに変化し、同じ口の中でも歯の種類や位置によって一様ではありません。それが自然の姿であり、”健康で美しい歯の色”といえるのです。
 
 しかし、日本では過去に、既婚女性がこぞって塗った「おはぐろ」、前歯を金で縁取った「額縁」や全体に金をかぶせた「お獅子(しし)」などがファッションの一部として流行し、歯にとっては迷惑な治療が多く行われました。最近は、できるだけ人目に触れる所の歯は白い色に・・・という考えが主流になっています。

 さて、歯が局所的に、黄・茶・黒などに変色する原因はさまざまです。
 歯が生える前であれば、体内成分や薬の色素が、歯茎の中で成長している歯の内部に沈着し、変色することがあります。また、飲料水のフッ素含有率が多い地域では、歯の成長期にその水を長く飲むことで、帯状に濁ったり褐色になる「班(はん)状歯」が問題となっています。

 歯が生えた後は、喫煙・飲食物・金属塩に含まれる色素が歯の表面に沈着することや、歯髄の病変によって変色します。
 これらに対する治療法も多様で、歯石や汚れを取る「清掃」、酸剤を使う「漂白」、色を塗る「薬物塗布」、変色部を削り、高分子化合物を詰める「充填(てん)」、歯の表面を薄く削り、シェルを装着する「ラミネートベニア」、歯冠全体を覆う「クラウン」などがあります。

 お悩みの方にとっては、歯の色が正常になり、口元に自信が出て、明るい日々を送れるという、大変素晴らしい治療ではないでしょうか。

 
第四回 『虫歯は怖くない』
 
 世界中ではびこって、昔から多くの人々を悩ませている虫歯。しかしアジア地域では歯の病気に対する関心が低く、日本でも本格的に歯の治療が行われるようになったのは明治時代からです。
 
 虫歯は正式には「う蝕」(デンタル・カリエス=歯が腐る病気)といい、細菌感染症のひとつです。
 
 特に歯の表面のエナメル質には平坦な部分だけでなく複雑な凹凸部分があって、これらの凹凸部分と、歯と歯の間、歯と歯肉の境目に汚れがたまりやすく、細菌が繁殖しやすい場所であるため、”う蝕の好発部位”とされています。
 
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 これらの部位では、細菌が作る酸でエナメル質が破壊され、象牙質で病巣が拡大され、歯髄(血管・神経を含む結合組織)が犯され・・・と放置していれば、う蝕が進行する一方です。骨髄にまで病変が及ぶ場合もあります。
 また年齢が進むと、骨や歯肉の退縮が起こり、歯根の象牙質の露出とともに、根面のう蝕の危険性がでてきます。
 
 う蝕の予防にはキシリトールなどの物質や新しい薬、機材がありますが、基本は歯の周りに汚れを付着させないことで、食後だけでなく一日に何度も清掃し、細菌量を増やさないようにします。
 
 う蝕治療の原則は、歯の痛んだ部分を取り除き、元の歯の形や機能を整えることです。
 歯髄の処置には、歯髄の保存療法、歯髄の除去療法などがあり、いずれも歯を保存するものです。抜歯が必要なこともありますが、なるべく避けたいものです。
 
 以上の通り、歯の病気の成り立ちと進行を考えれば、姑息な一時抑えの治療を繰り返すのではなく、生涯を通じてきちんと対処することで虫歯は怖くなくなると思いますが、いかがでしょうか。

 
第五回 『歯は動きます』
 
 一見、あごの骨から強固に生えている歯が動くなんて信じられないことですが、本当に歯は動きます(図参照)。

 何らかの原因で、ある歯が抜けたまま放置されると、その歯と噛(か)み合っていた歯は伸びてくるし、隣り合っていた歯も抜けた歯の場所に向かって動きます。

 このように私たちの歯は常に動く可能性のあるもので、歯同士はお互いを求めて動きます。また、唇や頬(ほお)の筋肉は歯を外側から押し、舌の筋肉は歯を内側から押していて、それぞれの力の平衡が保たれた場所に歯は落ち着いているのです。
 
 従って、歯が抜けたままだと、全体の歯並びや噛み合わせに悪い影響を及ぼすため、一刻も早い修復が必要です。これには天然歯の移植が行われることもありますが、多くの場合は入れ歯、ブリッジ、インプラントなどの人工歯を用います。

 さて、私たち現代人の口元は古代人に比べて大変小さく、小さなあごから多数の永久歯がひしめき合って生えてきます。その結果、八重歯、出っ歯、受け口、乱ぐい歯(重なって生える)、傾斜歯(異常な角度に生える)、転移歯(ずれた位置に生える)、捻転歯(ねじれて生える)などの好ましくない歯並びが多く見られ、口元の外見が損なわれるだけでなく、噛み合わせの異常、う蝕、歯周病、顎(がく)関節症などの誘因になっています。

 このような異常な状態を整えるためには、歯が動くことを活用して矯正治療が行われます。押す、引く、傾ける、ひねる、沈めるなどの力を徐々に加え、歯を正しい位置に移動させたり、あごの発育を調整したり、あごの大きさに対して歯の数が多すぎる場合は余分な歯を抜いたり、まれにあごの手術も行います。

 治療はたいてい数年以上に及びます。確かな見通しと根気が必須ですが素晴らしい結果が楽しみな治療です。矯正装置を付けると歯を磨きにくいので、う蝕に侵されないようにしたいものです。

 
第六回 『歯を支える仕組み』
 
 歯は、単独では役に立ちません。

 歯が機能するためには、歯を働かせる仕組みが無ければなりません。しっかりと歯を支えているのは、健康な歯肉や粘膜によって保護されている顎(がく)骨、歯根膜、セメント質などです。咀嚼(そしゃく)筋の働きで顎関節と下顎骨が連動し、初めて歯も自らの役割を果たすことができるのです。

 この一連の動きを顎連動といい、咬断(こうだん・噛み切ること)、咀嚼(噛み砕くこと)、嚥下(えんげ・飲み下すこと)、発音、表情の変化・・・と、さまざまな動作に欠かせない機能を果たしています。

 歯はこの顎運動の中心を担うものです。上下左右の歯並びや噛(か)み合わせが正常で、その動きが顎関節とよく調和が取れていて、さらに歯周組織が健康であるときに、お口全体の機能は最高に発揮されることになります。

 しかしながら、歯並びや噛み合わせが調和していなかったり、歯周組織や顎関節が弱っていたり、感染症などが進むと、正常なお口の機能は次第に失われます。晩期には、痛みや腫れや高熱に悩まされながら、ついには歯も失われていくことになります。

 歯の機能を支える仕組みが病んでいる状態に「歯周症」や「顎関節症」がありますが、このような事態を起こさないためにも、歯と歯周組織や顎関節についての関心を深め、いつもお口の健康状態を維持できる生活様式を整えたいものです。

 それには、清潔を保つためにお口の清掃を一日数回は行うこと、精神的・肉体的な疲れを残さないこと、正しい食生活、適度な運動、慢性疾患を悪化させないことなどが大切です。

 また、歯周症などの慢性疾患は、治癒した後もお口の中の環境が変わることで再発する可能性が大いにありますので、普段から健康チェックしてください。

 信頼できる歯科医との”かかりつけ”のお付き合い中で、十分なコミュニケーションを交わされることが望ましいのではないでしょうか?